ミドルシニアと呼ばれる世代の多くが、今の場所に留まり続けています。
自分の経験に、どれほどの市場価値があるのか、分からないからです。
分からないまま無理をしなくても、日々は過ぎていきます。
エン・ジャパンが運営する「ミドルの転職」が、2025年に転職者分析レポートを発表しました。
ミドル世代の転職者数は、この6年で2.45倍に増えています。
特に50代の転職者数は、7年で5.79倍まで伸びています。
転職後に年収が上がった人の割合は49%で、2018年と比べて11ポイント上昇しました。
年代別に見ると、30代は54%、40代は52%が、年収アップを実現しています。
50代に限っても、年収が上がった人は42%に上ります。
経験を積んだ世代が、今までよりも積極的に、新しい環境へ動き始めているのです。
経験に対する市場価値が分からない、これは私自身、多くの方から聞く声です。
市場価値が分からなければ、無理をしなくて済む今の場所に留まる方が、楽に感じられます。
一方で、新天地に希望を託し、自分の人生を少しだけリセットしたいと考える人もいます。
新しい経験にワクワクする気持ちが、動く力になるのでしょう。
留まる選択も、動く選択も、どちらも間違いではありません。
問題は、市場価値が分からないまま、時間だけが過ぎていく事実です。
ただし、動けば必ず市場価値が上がるわけではありません。
これまでの経験をそのまま語るだけでは、新しい環境でも評価されない場合が、珍しくありません。
大切なのは、自分の経験のどの部分が、誰にとって役立つのかを、具体的に言葉にする作業です。
実際に経営者やミドルシニアの方と関わる中で、同じ実感を持っています。
経験の市場価値が測れないまま、変化を先送りにしている人は、少なくありません。
それは怠けているからではなく、測る物差しを持てていないだけなのです。
経営者の立場でも、似た迷いが起きています。
ベテラン社員の経験を、正しく評価する物差しを持てていない会社は、少なくありません。
経験の価値を言葉にできなければ、本人も会社も、次の一歩を踏み出せなくなります。
経営者が今すぐ着手できる点は、大きく二つあります。
一つは、ベテラン社員の経験のうち、今の経営課題に使える部分を、具体的に示す取り組みです。
もう一つは、経験を試せる小さな役割を、あえて用意する取り組みです。
新しいプロジェクトの相談役や、若手の育成担当など、経験がそのまま強みになる場面は、意外と多くあります。
もちろん、すべての会社や個人に、そのまま当てはまるわけではありません。
業種や立場によって、経験の活かし方は変わってきます。
それでも、新天地への挑戦だけが、正解というわけでもありません。
今の場所に留まりながら、経験の出し方を変えるだけで、評価が変わる場合もあります。
大切なのは、留まるか動くかではなく、経験の市場価値を、一度自分の言葉にしてみる作業です。
これまでどんな課題を、どうやって乗り越えてきたのか。
その経験は、今の会社以外でも、誰かの役に立つのか。
一つずつ書き出してみるだけで、見えてくる景色は変わります。
書き出す相手は、家族でも、信頼できる同僚でも構いません。
自分一人で考え込むよりも、誰かに話しながら整理する方が、言葉として形になりやすいと感じています。
パーソル総合研究所が行った調査があります。
学び直しの重要性を感じている人は7割に上る一方、実際に行動に移せている人は、1割台にとどまるという結果が出ています。
重要性への理解と、実際の行動の間には、大きな隔たりがあるのです。
その隔たりを越える最初の一歩が、経験を言葉にしてみる作業なのかもしれません。
私自身、経営者やミドルシニアの方の相談に乗る中で、同じ場面に何度も立ち会ってきました。
ご本人にとっては当たり前だと思っていた、判断や工夫があります。
話を聞いてみると、他の会社や次の世代にとって、十分に価値のある経験だった場面は、少なくありません。
本人だけでは、その価値になかなか気づけないのです。
外から言葉にする人がいるかどうかで、経験が資産になるかどうかは、大きく変わってきます。
市場価値が分からないのは、あなただけではありません。
その経験、地域の会社を支える力になるかもしれません。
まず一歩、自分の経験を言葉にしてみませんか。
その一歩を、これからも応援していきたいと思います。
【出典】エン・ジャパン「ミドル世代の転職、6年で2.45倍―『ミドルの転職』転職者分析レポート2025―」、パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活についての定量調査」


