バブル崩壊を境にして右肩上がりの高度経済成長および安定成長期は終焉を迎えました。
その後インターネットの普及とともに『選択と集中』の時代を迎えることで事業の絞り込みが進んできました。
そして予期せぬ出来事である新型コロナウィルスの感染拡大によって『withコロナ』『Newノーマル』といった新たな状況へと追い込まれた感があります。
このような状況で『選択と集中』だけで良いかと問われれば十分では無いと答えています。
『選択と集中』だけではなく『選択と挑戦』を新たに加えなければこれから生き残ることはできません。
『withコロナ』そして『Newノーマル』を見据えた新たなビジネスモデルの構築を急速に進める必要があるのです。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ『外部環境』のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営手法を観察することで自社の経営に活かしてください。
今日の企業事例は第410話<伊藤忠商事>です。
繊維専門商社から総合商社へ1858年5月に初代・伊藤忠兵衛が麻布類の卸売業として創業しました。
1872年1月に<紅忠>(べんちゅう)を創立しました。
1884年に<紅忠>を伊藤本店としました。
1914年12月に<伊藤忠>合名会社に改組しました。
1918年12月に<伊藤忠>を株式会社<伊藤忠商店>と<伊藤忠商事>株式会社に分割しました。
1941年9月に<丸紅商店><伊藤忠商事><岸本商店>の3社が合併して<三興>となりました。
1944年9月に<三興><大同貿易><呉羽紡績>の3社が合併して<大建産業>となりました。
1949年12月に<大建産業>が財閥解体を受け<伊藤忠商事><丸紅><呉羽紡績><尼崎製釘所>に分割されました。
1977年10月に<安宅産業>を合併し繊維中心の商社から総合商社となりました。
2012年12月に世界最大の青果物企業<Dole>のアジアの青果物事業および世界の加工食品事業を買収しました。
2014年7月にタイの<Charoen Pokphand>と戦略的業務提携を結びました。
2015年1月にタイの<Charoen Pokphand>グループと中国最大の国有企業グループである<中国中信集団>の中核企業となる<中信集団>と戦略的業務・資本提携を結びました。
<伊藤忠商事>のビジネスモデル2019年3月に中国で現地の病院経営大手と病院運営に参入すると表明しました。
北京市で11病院を運営する<北京世紀康瑞病院>の株式数%程度を既存株主から取得し人工透析サービス大手<サントップ>の株式20%程度を取得します。
日本式のサービスの提供と病院規模の拡大を目指し中間所得層の拡大で増える生活習慣病関連のニーズを取り込む狙いです。
2019年4月に米国<ビア・トランスポーテーション>に出資したと発表しました。
欧米など60超の都市でライドシェア(相乗り)サービスを提供する大手ですが日本のタクシー会社などに相乗りシステムを提供する狙いです。
日本国内では直接サービスを手掛けずタクシー、バス会社、地方自治体にシステムを提供していく考えです。
2019年4月に発表した『2019年3月期』の連結決算は純利益が前期比25%増でした。
食料や繊維などの非資源部門が好調だったほか資源価格の回復も追い風となり3期連続で過去最高とりました。
2019年6月に<名古屋大学>と共同でがん治療の産学協同研究講座の設置を発表しました。
『がん細胞』の分裂を抑制する働きがあるとされる『たんぱく質』に着目することで先進的で副作用の少ないがんの遺伝子治療法の開発を目指します。
2019年7月に消費者関連の新ビジネスを担当する新組織『第8カンパニー』を設立しました。
1997年に『ディビジョンカンパニー制』を導入し7つの事業部門に分けてきましたが8番目のカンパニーとなります。
社内で『マーケティングのプロ』と称される細見研介執行役員がトップになり公募した8年目以下の社員など若手が中心となり部も課も設けない40人のフラットな組織です。
消費者ニーズをくみ取り事業を展開する『マーケット・イン』の発想で事業にあたります。
2019年10月に東欧のセルビアで排熱やガスで発電する施設の建設に着手すると発表しました。
一般家庭から出る廃棄物を回収し焼却時の排熱や発生するメタンガスを利用して発電します。
埋め立てる廃棄物を削減でき25年間で約300万トンの二酸化炭素が削減できる見込みです。
2019年10月に英国<ジャストパーク>と資本業務提携すると発表しました。
駐車場シェアリングの大手で個人や商業施設の空き駐車場をアプリで予約できるシステムを運営しています。
今後の成長が確実な『MaaS』(Mobility as a service)に<ジャストパーク>のノウハウを生かす狙いです。
2019年10月に<ほけんの窓口グループ>を連結子会社化したと発表しました。
来店型の保険代理店大手ですが100万人以上の契約者を抱え顧客家庭のニーズをきめ細かく把握しているため既存事業との相乗効果が狙いです。
2019年12月に<主婦の友社>などと連携して中国で知育・育児事業を展開すると表明しました。
中国は2016年に『一人っ子政策』を改め2人目の出産を認めました。
香港のライセンス管理企業である<PPWスポーツ&エンターテインメント>と<主婦の友社>との3社で香港に新会社を設立し需要が大きい中国市場を開拓する考えです。
2020年3月に海洋プラスチックごみの再利用に取り組むと表明しました。
中国や韓国などから年200トンが漂着する長崎県・対馬で回収したごみを分別、破砕した上で通常の樹脂に5%以上混ぜた容器を製造します。
米国<テラサイクル>と組み強度や色合いなどを検証し配合割合を変え最適な再利用容器が作れるようにします。
2001年に<プリンストン大学>の学生だったトム・ザッキー氏がゴミになるものなど無いという『廃棄物の概念を捨てる』理念のもと<テラサイクル>を設立しました。
2020年3月に米国<AKQA>と業務提携を結びました。
デジタルコンサルティング会社の<AKQA>と業務提携を結ぶことでデジタルトランスフォーメーションを包括的に支援する事業に乗り出します。
企業のデジタル化の課題の掘り起こしから消費者分析、基幹システムの共同開発などを一括して請け負います。
2020年5月に<電通リテールマーケティング>に出資し持ち分法適用会社にしました。
店舗のデジタル化支援や業務受託などを展開しているため出資することで小売店支援事業を強化できるとして店舗販促事業に参入する考えです。
2020年9月に医師向けにライブ配信するサービスを立ち上げると表明しました。
新型コロナウイルスの院内感染防止で対面での指導や研修会の機会が少なくなるなかベテラン医師の手術動画や講義動画をライブ配信することで技術を非対面でも伝承しやすくします。
医師向け情報サイトを運営する<フェーズワン>と資本・業務提携しサービスの開発パートナーとしました。
医療業界の『 DX支援』にビジネスチャンスを見い出します。
今日の企業事例である<伊藤忠商事>をすこし俯瞰して見てみましょう。
今年『持ち分法適用会社』にした後払い決済サービスの<Paidy>は2019年秋に<Amazonジャパン>の決済手段に採用されました。
コロナによる電子商取引市場の伸びで毎月10%前後のペースで決済金額を伸ばしています。
過去の支払い履歴を人工知能が分析することで各利用者の支払い能力の与信をするノウハウに強みを持っていますがクレジットカードを持てない若者や主婦層から支持を集めこのような『コロナ禍』でも新たな顧客を創出し続けています。
クレジットカード会社である<ポケットカード>も傘下企業ですが<伊藤忠商事>の加藤修一執行役員は……「与信をできる会社が身内にあるのが伊藤忠の金融事業の大きな力となる」と述べています。
金融ビジネスの重要なノウハウである与信機能を持つことで新たな金融サービスの開発もやりやすくなることが理由です。
総合商社で4位が定位置でしたが岡藤正広会長CEOの社長就任から10年が経った2020年6月に時価総額と株価で業界トップの<三菱商事>を抜き業界首位に立ちました。
就任当時の岡藤正広社長は『生活産業分野』に的を絞る覚悟を決め経営資源を集中しました。
『マーケットイン』の発想の具現化として『非資源』や『個人向け事業』などへ事業転換の舵を切りました。
消費者との距離が近い企業との連携を深め従来の商社経営では把握しづらかった『消費者ニーズ』をつかんで新たなビジネスにつなげる戦略です。
連結対象会社は約300社で利益規模は年間20億~30億円程度の生活関連の中小企業がほとんどです。
銅や原油・LNGなどの金属資源やエネルギーなどと比べると一桁も二桁も利益額は小さくなります。
物販に加え金融や保険にも業容を広げデジタル技術を活用して現場からあがるデータから消費者が望む商品やサービスをいち早く割り出して提供するデジタル時代の『御用聞き』を<伊藤忠商事>は目指しています。
『Newノーマル』に合わせた新たなビジネスモデルの構築と岡藤正広会長CEOの後継者選びが<伊藤忠商事>にとって当面の課題になっています。


