<サイゼリヤ>が2021年4月までに従来の6割程度の広さの小型店を出店すると表明しました。
平均的な店舗の延べ床面積は230平方メートル前後ですが小型店は約130平方メートルとコンビニと同規模面積になります。
既存店と比べて賃料が安くなるほか冷蔵庫や調理機器などの厨房設備を半分に減らし店員数も少なくて済むため運営費用が下がります。
既存店は感染対策で座席数を20%程度減らしていますが隣同士を板で仕切り一人客の専用席を多く設ける小型店はコロナ禍での既存店と比べて収容できる客数は大きく変わりません。
運営費用の削減や宅配対応など『withコロナ』を見据えたビジネスモデルの転換を進めています。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ『外部環境』のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営手法を観察することで自社の経営に活かしてください。
今日の企業事例は第409話<三井化学>です。
分離と合併を繰り返してきました1933年4月に旧<三井鉱山>の東洋高圧工業所を分離し<東洋高圧工業>を設立しました。
1941年4月に旧<三井鉱山>の石油合成三池試験工場三池染料工業所、目黒研究所が分離し<三井化学工業>を設立しました。
1955年7月に三井グループ7社及び<興亜石油>により<三井石油化学工業>を設立しました。
1968年10月に<東洋高圧工業>が<三井化学工業>を吸収合併して<三井東圧化学>に商号を変更しました。
1997年10月に<三井石油化学工業>が<三井東圧化学>と合併して<三井化学>に商号を変更しました。
<三井化学>のビジネスモデル2019年3月に『2018年10月~12月期』の純利益は前期比29%減と発表しました。
しかしウレタン原料や合成樹脂の原料となるフェノールなど不採算製品の整理を進めてきたことで減益率は小さく抑えることができました。
2019年5月に発表した『2019年3月期』の連結決算は純利益は6%増と最高益を更新しました。
前期に苦戦したのは中国景気の減速のあおりで2018年10~12月期以降に石化製品の汎用品市況が悪化したためでした。
2019年5月に<環境省>を訪れプラスチックに代わる素材の開発について意見交換しました。
原田義昭環境大臣に経済性の評価を実施したうえで植物由来のプラスチック素材の生産を2024年に始めると説明しました。
自動車や家電部品として広く使われる汎用樹脂のポリプロピレンでソルゴーと呼ばれるアフリカ原産のイネ科植物を発酵させて糖化したものを化学合成させた原料を使うようにします。
2019年内に千葉県茂原市の工場にポリプロピレン生産の上流工程の研究設備を導入して量産に向けた実証実験を始めます。
100%植物由来の原料を使った商用生産が実現すれば世界で初めてになります。
生産は三井化学グループの<プライムポリマー>が手掛け2030年にはポリプロピレンの国内生産量の4%に当たる年産10万トンの体制を目指します。
2019年8月に『2019年4~9月期』の業績見通しを下方修正しました。
売上高は前年同期比5%減と一転減収となり純利益は52%減を見込んでいます。
石化製品の基礎原料であるナフサ価格の下落などで主力事業の採算が悪化しました。
自動車部品および樹脂改質材用途を中心とするエラストマーの需要減などによりモビリティ事業も減収減益となりました。
2019年9月に原油相場の急変動について業績への影響に懸念を表明しました。
<日本化学工業協会>の会長であり<三井化学>の社長である淡輪敏氏は「景気の下ぶれリスクが高い中では化学メーカーの業績にとって厳しい状況をもたらす」と述べています。
サウジアラビアの石油施設が攻撃され原油の生産量が落ち込んでいるため長期間にわたって原油やナフサの供給が細れば「国内の化学関連プラントの稼働にも影響は起こりうる」と述べています。
2019年10月に<エレファンテック>と業務提携したと発表しました。
<エレファンテック>は<東京大学>発のスタートアップでインクジェット印刷技術を使って曲がる性質のある樹脂フィルムの基板上に回路を形成する技術を持っています。
<三井化学>の名古屋の工場内に来年秋の稼働を目指して基板製造の量産設備を導入します。
2019年11月に世界景気の先行き不透明感について淡輪敏社長が経営説明会で述べました。
売上高の50%弱を汎用の石油化学製品が占めているため自動車やヘルスケア関連の高付加価値の機能性材料の生産拡大を急ぐ方針を示しました。
「建設費用は上昇しているが競争力を維持するために米国での生産増強を検討している」と淡輪敏社長は述べています。
2019年12月にガラス繊維強化プラスチックを中国で初めて生産すると表明しました。
中国・広東省の工場にドア部品に使うガラス繊維強化プラスチックの新ラインを導入します。
2020年2月に青果物の鮮度を長期間保持できる包装用フィルムの開発を表明しました。
青果物の呼吸で発生する二酸化炭素(CO2)を外部に排出し外気に含まれる酸素を内部に取り込みます。
ブドウなどでは最長6カ月は鮮度を落とさずに保存できます。
2020年3月に本社に勤務する全従業員を対象に原則在宅勤務にすると発表しました。
通勤時など混雑が激しいオフィス周辺での活動を制限することでウイルス感染の拡大を抑える考えです。
2020年4月に不足する医療用ガウンの不織布の供給を始めたと発表しました。
新型コロナウイルスの感染拡大で日本政府の要請も受けて輸入品が多い医療用ガウンの国内での供給体制を整えました。
2020年5月に『2020年3月期』の連結純利益が前期比50%減になったと発表しました。
ベトナムの石油化学事業の採算悪化に対して出資金評価損を追加計上するほか自動車向け樹脂の販売減なども要因です。
2020年6月に経営概況説明会で橋本修社長は新型コロナウイルスの影響を述べました。
4月に社長に就任した橋本修氏は「2021年3月期は自動車の生産が2割落ち込むとみている」と述べ自動車関連事業で新型コロナウイルスの影響が大きいとの認識を示しました。
2020年9月に『2020年4~6月期』の決算で石化部門の営業損益が63億円の赤字と発表しました。
新型コロナの影響で各国の自動車の生産が停止した影響が大きくなっています。
今日の企業事例である<三井化学>をすこし俯瞰して見てみましょう。
2020年8月に<DIC化工>から樹脂の成形・加工関連事業の一部を譲受すると発表しました。
<DIC>の子会社の<DIC化工>は<三井化学>の子会社の<ジャパンコンポジット>に不飽和ポリエステル樹脂をガラス繊維などで強化したシート状の材料(SMC)を成形・加工する事業を12月に譲渡する予定です。
強度が高く浴室の設備や自動車部材などに使われる材料で<三井化学>グループは樹脂の製造から加工まで一貫して手掛けることで自動車部材の提供などを強化できると見込んでいます。
しかし2020年6月の『経営概況説明会』で橋本修社長は「2021年3月期は自動車の生産が2割落ち込むとみている」と述べています。
「上期は厳しい」「下期には徐々に回復するだろうが数年は厳しいかもしれない」との見通しも述べています。
それでも橋本修社長は電動化や自動化といった一連の「CASE」の流れはコロナの影響を受けても変わらないと見ており素材の軽量化などを推進する組織横断型の事業体制を整えていく考えを示しています。
ICT関連素材では半導体の製造工程で使われるフィルムやカメラレンズ材料の生産能力を相次ぎ増強していて現状で数百億円台の売上高を「5~10年で1000億円規模に育てたい」と橋本修社長は明言し次の強化事業に位置付ける考えを示しています。
さらに新たに医療事業戦略グループを作り整形外科関連の材料や細菌感染を迅速診断するシステムなどを展開するとともに必要に応じてM&A(合併・買収)も視野に入れています。
コロナ禍でマスクと防護服に使う不織布や消毒液などの需要が世界的に高まっているためマスクの鼻に当たる部分に使われる形状記憶素材や不織布の生産増強などに取り組んでいく考えです。
2020年8月には希少糖の一種に植物の病気を抑制する抗菌機能があると発表しました。
<香川大学>との共同研究で希少糖の一種『D―タガトース』に食品にも含まれる安全な成分であることを活用し環境や人体に優しい農薬の商品化を目指します。
橋本修社長は長期経営目標として……「眼鏡のレンズ関連やフィルム包装材や農薬関係には積極的に投資をしたい」「2016年からの長期経営目標では10年間で1兆円の設備投資を掲げている」と述べ『ヘルスケア』や『フード&パッケージ』関連など新たな成長領域への進出のため提携やM&A(合併・買収)なども選択肢になると考えています。
従来からの基盤事業である『石油化学』の汎用品分野での収益の安定を図るとともに新型コロナウイルスの影響で外部環境が大きく変わるなか成長事業の開拓に乗り出すことで新たなビジネスモデルの構築と戦略の再構築を迫られています。


