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ブログ / ビジネスモデルの企業事例

第259話 中部電力のビジネスモデル

2018年4月20日 執筆:渡邉ひとし

第259話のテーマは『大きな変革の時を迎えて』です。

(ブログ=月水金の平日投稿です)

3年かけた「CI 計画」の導入

前職の広告業界で担当した「CI 計画」の仕事が印象に残っています。

1980年代は「CI ブーム」が起こり「コーポレート・アイデンティティ」が盛んに企業に導入されました。

<中部電力>の場合は3年間で「CI 計画」の導入を完了しましたが企画構想・立案・実施計画ともに完成度の高い「CI 計画」でした。

当然のことですが提案者側の一方通行になってしまえば単なる絵に描いた餅になりますが実行者の真剣な対応と全社一丸となる取り組みがなされたことで完成度の高さを感じました。

<中部電力>の沿革を見てみると……戦前の「配電統制令」によって電力会社は国家統制のもと統合されましたが戦後のポツダム政令によって全国9電力会社に移管されました。

そのため1951年5月に<中部電力>が設立されています。

<中部電力>のビジネスモデル

戦後の地域分割により河川における発電用水利権が決められましたが木曽川は<関西電力>に引き継がれ信濃川は<東京電力>に引き継がれたため<中部電力>は水力発電による電源の確保に苦しんできました。

そのため火力発電が中心になりますがこの地域の人口密度が高いため火力発電に適した立地がそれほど多くありませんでした。

たとえば愛知県の碧南火力発電所は国内最大の石炭火力発電ですが排煙や粉じんなどの問題がおこるため常に最新の環境対策の設備に入れ替え高い熱効率と大型電源により供給力不足の解消に努めてきました。

しかし火力燃料価格が上昇すればコスト面で<中部電力>は苦境に陥ります。

そのため2015年4月に<中部電力>は<東京電力>と共同出資会社の<JERA>を設立。

燃料調達事業や海外発電事業などを統合することが目的になります。

その一方で<JERA>のゴーデンカー会長は「人口が減り省エネへの関心が高い日本は成長市場になりえない」と述べています。

そのため海外企業の事業買収により海外発電事業の収益を伸ばす方針です。

2017年度の海外発電事業の純利益は150億円程度でしたが2030年度の海外発電事業の純利益を1200億円まで伸ばすという方針です。

2016年10月に液化石油ガス最大手の<岩谷産業>と提携交渉を始めました。

2017年4月から家庭向けガス小売りが全面自由化になるため家庭向けガス販売で実績のある<岩谷産業>と組むことで器具の保安などの業務体制を強化します。

2015年度に97万トンのガス販売を2030年に300万トンにまで拡大する計画です。

2017年4月より外部の企業や大学などからアイデアを募り事業の効率化や新規事業の立ち上げを目指すオープンイノベーションに乗り出します。

専用のウェブサイトを開設して販売分野などの事業提案を募りノウハウを持つ外部企業との事業化を目指しています。

同時に業務全般へのIT活用を推進するデジタルイノベーショングループを新設。

送配電や電力販売などの業務改革や電力の需給調整にもIT活用を推し進める考えです。

2017年3月には<東京電力ホールディングス>と「火力発電事業」を<JERA>に統合することで基本合意しました。

このことで国内の50%を占める火力発電会社が誕生します。

2017年4月に<慶応義塾大学>や<日立製作所>とサイバーセキュリティー分野で共同研究を始めると発表しました。

サイバー攻撃の情報や対処法を共同研究して対応力を向上するのが狙いです。

2016年度の電力販売実績は前年対比0.1%減で3年連続の減少です。

電力小売り自由化で他の電力会社に切り替える法人顧客が増えています。

2017年4月にガスの小売りが全面自由化されましたが<中部電力>の勝野哲社長は……「一歩先を行く総合エネルギーサービス企業グループを目指し期待を超えるサービスを届けたい」と決算の記者会見で述べています。

全面自由化された2016年度の販売電力量は<関西電力>を抜いて2位になりました。

<中部電力>は原子力発電所の比率が低く液化天然ガス発電所を数多く持っています。

原子力発電所の停止の影響が比較的低く他の電力会社がコスト増で悩むなか電気料金への影響が低く抑えられています。

首都圏や関西圏への新規参入業者が多く中部圏への進出が少ないことも要因です。

さらに首都圏の<足利ガス>など10社以上の中堅ガス会社と提携してガス顧客向けに電気を販売するなど新たな顧客も獲得しています。

2017年5月には「四日市火力発電所」内の敷地に木質ペレットとパームヤシ殻を混ぜて使うバイオマス燃料100%の発電設備を建設すると発表しました。

2030年度までに全体の電力需要に占める再生可能エネルギーの割合を2016年度の約13%から20%にまで高める計画をしています。

2017年6月に<関西電力>と<北陸電力>との3社で送配電部門の連携を検討しはじめました。

鉄塔や変電所などの送配電に関わる設備の仕様を共通にして調達や維持管理などのコストを下げます。

2020年4月から政府が進める「電力システム改革」で送配電部門と発電部門を切り離して別会社にする法的分離が実施されます。

そのため送配電事業に関連する電力会社の連携が今後も進みそうです。

2017年7月に水力発電を強化する方針を示しました。

既存の水力発電所の設備を最新式のものにして発電量を増やし長野県と静岡県に新たに2基の水力発電所の建設を進めます。

2017年11月には小売り、送配電、火力発電の3事業を分社化する検討に入ったと表明しました。

2020年に送配電部門を切り離す発送電分離が始まることへの対策です。

<中部電力>の勝野哲社長は……「新しいビジネスモデルを構築する。

持ち株会社化は選択肢の一つ。」

と記者会見で述べています。

2018年2月に<大阪ガス>と首都圏で電力・ガス販売やサービスを提供する新会社の設立を発表。

記者会見で勝野哲社長は……「協力できる企業とはどんどん連携したい。

住宅や家電、通信、自動車などあらゆる業種が候補だ。」と述べました。

2018年3月には2020年代後半までの長期経営指針を発表しました。

経常利益2500億円以上を目指しますがその内訳は……◉エネルギー事業(発電・販売・送配電)1200〜1300億円◉海外エネルギー事業700億~800億円◉IT関連の新事業200億~300億円さらに「新たな事業形態や新規事業で収益構造の変革を推進する」と表明。

<中部電力>は『総合エネルギーサービス企業グループ』を目指してこれから「新たなビジネスモデル」を構築しようとしています。

(次回ブログ=4月23日月曜投稿です)

このことから何を学べるでしょうか?

大きな変革期を迎えた企業は……自社の殻に閉じこもった考え方で事業構造を変革するのではなく協力できる企業と積極的に連携して事業構造を変革していく方が新たなビジネスモデルを構築しやすい。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

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