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ブログ / シン組織変革の教科書

第55話 研修をしても組織が変わらない――22種類中18種類で実施率が減っている本当の理由

2026年9月11日 執筆:渡邉ひとし

「研修をしたのに、何も変わらない。」

そう漏らす経営者に、これまで何人も出会ってきました。

「使いこなせていないのは、うちの社員の意識が低いから。」

そう考えている経営者にも、同じくらい出会ってきました。

しかし、現場の社員に話を聞くと、まったく違う景色が見えてきます。

日本経済新聞が報じた、矢野経済研究所の調査があります。

(2016年から2025年にかけて、従業員100名以上の企業の人事担当者、1,400名を対象にした調査です)

従業員500名以上の企業では、22種類の研修のうち、18種類で実施率が減少しています。

しかも、12種類は、5ポイント以上の減少です。

企業は、研修そのものをやめているわけではありません。

法令対応が必要なハラスメント研修は、むしろ増えています。

一方で、スキル系の研修は、効果が見えにくいという理由だけで、真っ先に削られています。

これは、研修の中身が悪いという結論ではなく、効果の測り方自体が曖昧なままだという証拠でもあります。

外部講師を呼び、会場を押さえ、社員の業務時間を止めて、研修を実施します。

それだけの手間をかけても、翌週には現場が元に戻っているという相談を、私はよく受けます。

問題は、研修の内容ではなく前後の設計です。

中小企業では、人事の専任担当者を置く余裕がない会社が、少なくありません。

総務担当者が本業の合間に、評判の良さそうな研修を選び、日程を組んでいるという会社にも、何社も出会ってきました。

リクルートマネジメントソリューションズが、38社884名の新任管理職を対象に行った実証研究があります。

その分析によると、受講前の参加意欲の高さが、その後の実践に影響すると示唆されています。

さらに、受講後に自分の意識や行動が変わったと実感できるかどうかも、実践の継続を左右しています。

裏を返せば、実感を持てないまま研修が終われば、行動は続きません。

多くの会社では、研修は「受けさせて終わり」になっています。

参加者は、なぜ自分がこの研修を受けるのか、目的を理解しないまま参加します。

研修で学んだ内容は、抽象的なフレームワークや、一般論として語られる場合が多くなります。

自分の日々の業務のどこに当てはめればいいか、社員自身にも分からないまま、研修は終わります。

「あの研修、良かったです。」

そう答える社員に、では明日から何を変えるのかと聞くと、言葉に詰まる場面を、何度も見てきました。

これは、社員の意識の問題ではなく、研修と現場の間に翻訳の作業が欠けている問題です。

さらに、現場には別の壁があります。

研修で新しいやり方を学んでも、上司や先輩が旧来のやり方を続けていれば、若手は板挟みになります。

「教わった通りにやろうとしたら、先輩から前のやり方でいいと言われた。」

そう話す若手社員の声を、私は何度も聞いてきました。

周囲が変わらないまま本人だけが変わろうとすれば、浮いた存在として扱われかねません。

若手だけでなく、ベテラン社員も、研修に身構えている場合があります。

今さら研修で教わる内容など、現場で十分に分かっている

そう感じているベテランほど、研修中は静かに座り、現場に戻れば何も変えません。

ベテランに必要なのは、教わる研修ではなく、自分の経験を言語化して人に伝える機会です。

研修さえ受けさせれば、社員が変わるだろうという期待は、正直に言えば都合のいい願望に近いといえます。

研修の効果が見えないという声の裏には、経営者自身が研修を人事任せにし、結果だけを求めてきた事情が隠れている場合もあります。

経営者は、研修を実施した時点で、投資が回収されると考えがちです。

しかし、社員にとって研修は、業務が止まる時間であり、負担そのものでもあります。

普段の業務を抱えたまま研修の時間を割かれ、翌日には通常業務が積み上がっています。

そこまで追い込まれたまま、新しい行動を試す余力が残っているかを、経営者はあまり考えていません。

研修は、個人に向けて実施されますが、行動が変わるかどうかは、周囲の設計次第です。

だからこそ、研修は受講者個人の取り組みではなく、チーム単位の取り組みとして設計し直す必要があります。

第一に、研修に入る前に、参加者自身に受講の目的を、言葉にしてもらいます。

第二に、学んだ内容を3つの行動目標に絞り、上司とチームの前で共有します。

行動目標を絞るのは、全部を実践しようとすると、結局どれも定着しないためです。

第三に、研修から1か月後に、実践できた点と、できなかった点を、チームで振り返ります。

研修の場を、教わる場と教える場の両方として設計すれば、ベテランの参加姿勢も変わってきます。

この三つを整えるだけで、同じ研修費用でも、現場に残る効果は変わります。

研修をやめる必要はありません。

しかし、研修の効果を、研修そのものだけに求める見方は、見直す時期に来ています。

研修の予算を増やしても、前後の設計が空白のままなら、同じ結果が繰り返されるだけです。

もし今、研修をしても現場が変わらないと感じるなら、次の研修を組む前に、前後の設計を見直してみてください。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

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