会社の看板を外したとき、自分に何が残るのかを答えられないミドルシニアは、多いのではないでしょうか。
会社の物差しで評価されている間は、その不安に気づきにくいからです。
しかし、働く期間が長くなるほど、会社の物差しだけで過ごす時間のリスクは大きくなります。
厚生労働省は2026年6月1日、令和7年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表しました。
70歳までの就業確保措置を実施している企業は34.8%で、前年より2.9ポイント増えています。
65歳以上を定年とする企業(定年制の廃止を含む)も34.9%で、2.3ポイント増えました。
65歳までの雇用確保措置は、すでに99.9%の企業が実施しています。
働ける年齢の上限は、制度の面で確実に引き上がっています。
一方で、65歳までの措置の内訳を見ると、65.1%の企業は「継続雇用制度」で対応しています。
「定年の引上げ」で対応している企業は、31.0%です。
継続雇用制度は、定年でいったん区切り、そのあとで雇用契約を結び直す仕組みが一般的です。
つまり、働ける期間が延びても、役割や処遇、経験の活かし方まで変わったとは、この数字だけでは言えません。
制度が整っても、70歳まで納得して働ける環境が整うとは限らないのです。
働く期間だけが延び、役割への納得感が置き去りになる職場もあり得ます。
ただし、この調査は常時雇用21人以上の企業237,739社の集計であり、すべての職場に当てはまるわけではありません。
私は数年前、大学のキャリアデザインの授業で講義した際、ホワイトボードにこう書きました。
今の大学生が2050年を超える頃には、定年の延長が当たり前になり、80歳定年になるという予測です。
そのとき、学生たちは信じられないという様子でした。
少し引き気味で、若干冷笑する学生もいました。
もちろん、これは私の予測であり、決まった制度ではありません。
それでも、私がそう考える根拠は、周囲の変化にあります。
70歳を超えても、華やかなステージに立ち続けるプレーヤーは大勢います。
サッカーでは、三浦知良選手が59歳の今も、プロとして活躍し続けています。
ドキュメンタリー番組では、102歳や105歳の方が、毎日畑に出て耕したり、自分の仕事を見つけて働いたりする姿を見かけます。
そこから私が感じるのは、社会的な役割や貢献、周囲からの感謝の言葉、そして社会とのつながりの大切さです。
日々、自分が携わる仕事の存在も、長生きの秘訣だと思います。
過度な運動ではなく、軽いストレッチをして、暴飲暴食を避けます。
食事を毎日おいしくいただき、睡眠も適度にとります。
こうした日々の生活が、長寿を支えていると私は考えています。
厚生労働省によると、100歳以上の高齢者は、2026年9月に初めて10万人を超えました。
仮に100歳まで生きるとして、公的年金だけで生活できるでしょうか。
70歳や80歳で現役を続ける時代は、すでに始まっていると私は考えています。
従来、会社組織の中での自分の判断軸は、その組織の判断軸に合わせてきたはずです。
しかし、組織間の移動が当たり前になり、それまでの知識やキャリアを活かして、ステップアップする時代になっています。
そのため、自分自身の市場価値を意識して、自己投資するのは、自然な行動だと考えています。
市場価値は、会社の中での評価とは、物差しが異なります。
市場価値を高めるとは、会社の外でも通用する強みを、自分の言葉で説明できるよう備える行動です。
だからこそ、会社軸から自分軸へと、判断の軸足を置き換える必要があります。
会社での評価が高い人ほど、自分軸を持たなくても済んでしまうため、備えが遅れやすい点には注意が必要です。
自分の人生の主人公は自分であるという自覚を、強く持つ姿勢が出発点です。
そのうえで、常に新しい分野に興味や関心を持ちます。
新しいコミュニティや学びの場で、自分を楽しみながら磨いていきます。
そのような50代からの時間の使い方が、大切だと思います。
もちろん、仕事や家庭の都合で、学びの時間を取りにくい方も多いでしょう。
最初の一歩は、小さくて構いません。
会社の外で通用する自分の経験は何かを、紙に書き出すだけでも、自分軸への入り口になります。
あなたも、100歳を超える一人かもしれません。
あなたは、会社の看板を外した自分を、どのような言葉で説明しますか。
その経験、地域の会社を支える力になるかもしれません。
トライアンドエラーを重ねながら歩むあなたを、心から応援しています。
【出典】厚生労働省「令和7年『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」(2026年6月1日公表)、厚生労働省「令和8年度百歳の高齢者へのお祝い状及び記念品の贈呈について」(2026年9月15日発表)


