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ブログ / ミドルシニア世代の智慧

第53話 ミドルシニア管理職が抱え込みやすい背景

2026年7月15日 執筆:渡邉ひとし

【あの人が辞めたら終わり、の会社が増えている】属人化が招く倒産リスクとミドルシニア管理職の本音

帝国データバンクの調査で、見過ごせない数字が出ています。

2025年度の人手不足倒産は441件で、3年連続で過去最多を更新しました。

なかでも「従業員退職型」の倒産は118件と、こちらも過去最多です。

たった一人の退職が、会社の存続を揺るがす引き金になっています。

「うちは大丈夫」と思っている社長ほど、実は最も危ういかもしれません。

毎日顔を合わせ、細かい指示をしなくても仕事を回してくれる管理職がいる会社ほど、油断は忍び寄ってきます。

あなたの会社の現場も、特定の管理職一人の頑張りだけで、かろうじて回ってはいませんか。

その管理職が体調を崩して長期に休んだ瞬間、取引先との経緯を説明できる人が誰もいなくなります。

若手は指示を待つばかりで、社長のもとへ相談だけが次々と集まってきます。

気づけば社長自身も、休みの日にスマホを手放せない生活が続いているかもしれません。

これは、優秀な人材がいる会社の姿ではありません。

優秀な人材への依存が、進んでしまった会社の姿です。

なぜ、これほど一人への依存が進んでしまうのでしょうか。

背景には、二つの理由が重なっています。

一つ目は、労働市場側の圧力です。

帝国データバンクの別の調査でも、正社員の人手不足を感じる企業は5割を超えています。

採用しても、すぐに戦力になる人材はそう簡単には見つかりません。

だからこそ、経営者は今いる管理職へ頼らざるを得ない側面があります。

しかも中小企業は大企業と違い、代わりを立てられる管理職の層が薄い、という弱点も抱えています。

二つ目は、管理職本人の心理です。

私はこれまで、中小企業の経営相談に1,200件以上対応してきました。

そこで見えたのは、彼らが社長の指示を軽んじているわけではないという実情です。

多くは若い頃に、自分が動いて成果を出した経験を強く持っています。

そのため、実務をこなす行為自体が、自分の存在価値を確かめる手段になっています。

さらに年下の部下との距離感に悩み、「指示を出して嫌われたくない」と感じる管理職も多いです。

だからこそ彼らは、任せないのではなく、任せられずにいるのです。

この心理を放置したまま数字だけを追いかけても、抱え込みは決して解けません。

この二重構造を理解しないまま、「もっと部下に任せてほしい」と伝えても、行動は変わりません。

任せた部下が失敗すれば、責任も謝罪も、結局は管理職へ戻ってくるからです。

この負担に耐えかねた管理職が、静かに離職を選ぶ可能性も否定できません。

一人のベテランを失った際の穴は、採用や育成では簡単に埋まりません。

抱え込みを解く鍵は、精神論ではなく、業務の構造自体を見直す部分にあります。

私が経営相談で必ず行うのが、ホワイトボードを使った業務の棚卸しです。

管理職の方の頭の中にある業務や不安を、その場ですべて書き出し、目に見える形へ整理します。

すると本人自身が、何を握りしめていたのかを初めて客観的に認識できるようになります。

そのうえで、業務を3つに分けます。

「手順さえあれば部下へ渡せる作業」「判断基準があれば任せられる業務」「当面は管理職が担う重要判断」です。

どの金額を超えたら報告するのか、どの品質問題なら出荷を止めるのか。

こうした判断基準を言葉にして残せば、退職や休職が起きても、業務は止まらずに済みます。

これは単なる引き継ぎ資料の作成ではなく、会社の強みを個人の頭の中から組織の資産へ移す取り組みです。

時間はかかりますし、一度で完成する作業でもありません。

それでも、少しずつ積み上げるほど、会社は特定の一人に頼らずに済むようになります。

私自身、近畿地方の老舗会社を支援した際も、鍵となったのは属人化の解消でした。

特定の担当者しか把握していなかった取引先対応や製造工程を、複数人で共有できる形へ整理しました。

その結果、同社は3年で年商28億円から58億円へ成長しています。

また、自ら経営に携わった会社でも、同じ発想で業務を仕組み化し、3年で業績を150%まで伸ばしました。

どちらの現場でも、特定の一人がいなくなる不安を先に取り除いてから、次の成長投資へ進みました。

派手な改革ではありませんが、この地道な積み重ねが、現場を動かす一番の近道でした。

管理職が仕事を抱え込む背景には、会社を守り続けてきた責任感があります。

だからこそ、本人を責めても意味はありません。

まずは「なぜ任せないのか」ではなく、「何が心配で手放せないのですか」と聞いてみてください。

その一言から、会社が本当に変えるべき部分が見えてきます。

退職を完全に防ぐのは、正直なところ難しいでしょう。

しかし、退職が起きても倒れない会社へ、少しずつ近づいていくのは可能です。

浮いた時間は、本来注ぐべき中長期の戦略や、次の投資判断へ振り向けられます。

一人で背負い込む必要はありません。

まずは、業務の棚卸しから始めてみましょう。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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