第308話のテーマは『海図のない海への船出』です。
アニメーション番組が楽しみ
広告業界は約6兆円規模の業界ですが年間売上ランキングを見ると第1位〜第3位までの売上の差がかなり大きいことが特徴です。
広告業界のトップ3は……◉ 1位:電通=1兆5615億円◉ 2位:博報堂 = 9470億円◉ 3位:サイバーエージェント = 3713億円そして業界年間売上ランキング4位が<アサツーディ・ケイ>になります。
私が広告業界で働いていた頃は<アサツーディ・ケイ>は3位でした。
1999年1月に<旭通信社>と<第一企画>が合併して<アサツーディ・ケイ>になりました。
1956年に稲垣正夫氏が中心になり<旭通信社(通称:アサツウ)>を設立。
子供向けテレビ番組としてのアニメーション作品の企画制作が有名で「8(エイト)マン」のエンドロールに<旭通信社>の社名が出ていました。
そして1998年に世界第1位の広告代理店グループである<WPPグループ>と資本業務提携しました。
1951年に境直哉氏と堀田三郎氏が中心になり<第一企画宣伝>は設立されました。
1961年に<第一企画(通称:イチキ)>へ商号変更。
社名が表すように企画に強い会社のイメージがありました。
2002年に<アサツーディ・ケイ>の本社を東京都中央区築地へ移転しました。
アサツーディ・ケイのビジネスモデル
2017年10月にアメリカの投資ファンドである<ベインキャピタル>はTOB(株式公開買い付け)を実施して<アサツーディ・ケイ(ADK)>を買収すると発表しました。
<ベインキャピタル>は3年後に再上場して資金を回収する計画です。
<アサツーディ・ケイ>の植野伸一社長は「創業60年を超え次の成長を考えたときにWPPとパートナーとしてやっていけるのかとの考えがあった」と述べています。
3年後に再上場までにデジタル化の波への対応として遅れているデジタル化への対応を急ぎます。
同じく2017年10月に筆頭株主である<WPPグループ>との資本提携を解消すると発表しました。
投資ファンドの<ベインキャピタル>は1984年に設立にボストンで設立された世界的な投資ファンドで日本で企業再生された会社は<すかいらーく><雪国まいたけ><ドミノ・ピザ・ジャパン><ベルシステム24>そして<東芝メモリ(旧社名)>など。
投資家から資金を集めて企業の事業を取得し社内外のプロフェッショナルな人材を企業に送り込み再生を図るという手法です。
しかし筆頭株主である<WPPグループ>のほか第2位株主の<シルチェスター・インターナショナル・インベスターズ>や香港のファンドである<オアシス・マネジメント>は株式公開買い付けに反対を表明しています。
2017年11月に発表した「2017年1~9月期」の連結決算は純利益が前期比の400%超でした。
前期にあった特別損失がなくなり海外不動産の売却益が膨らみました。
同じく2017年11月に筆頭株主である<WPPグループ>が<ベインキャピタル>による<アサツーディ・ケイ>株のTOBに応じると一転して態度を変えました。
世界有数の広告市場である日本での足がかりを<ベインキャピタル>や<ADK>と協議しながら維持したいという考えです。
2017年12月に「アサツーディ・ケイ株」へのTOBが成立したと発表しました。
<ADK>は臨時株主総会での決議を経て上場廃止となります。
今後は<ベインキャピタル>とM&A戦略を含めグローバル化とデジタル化を進めます。
<WPP>の傘下であった約20年間は思うようにM&A戦略を進めることができず業界上位2社のような時代の変化に対応した動きがほとんどできませんでした。
2018年1月に熊本県の蒲島郁夫知事は県の宣伝キャラクター「くまモン」に関連する商品の製造・販売を海外の企業にも解禁すると発表しました。
「くまモン」の利用許諾や商標管理や不正利用対策などは<アサツーディ・ケイ>が主体となって各国や地域の取引企業がおこないます。
これまでの<アサツーディ・ケイ>の海外著作権を管理しながら人気を高めた実績が評価されました。
2018年2月に発表した「2017年12月期」の連結決算は純利益が前期比の2.3倍でした。
販管費を抑制したことや固定資産売却益などの特別利益を計上したことが要因です。
同じく2018年2月に臨時株主総会で株式併合の実施が承認可決されたと発表しました。
これにより2018年3月16日に<ADK>は上場廃止となります。
2018年6月に<早稲田大学>とデータサイエンスに関する学術交流協定を締結しました。
<ADK>が持つ膨大な市場調査のデータを分析し研究領域だけでなくビジネスへの活用方法も検討します。
消費者の行動の予測モデルの研究や社会現象の分析などに活用します。
<WPPグループ>傘下から離脱し株式上場が廃止となることでこれまでになく積極的にグローバル化とデジタル化を進めることができます。
その一方でこれまでにない「自主性」をもって事業の改革と経営の刷新を図る取り組みをして行く必要があります。
メディアから広告枠を買って企業の広告を制作・出稿するという従来のビジネスモデルから企業のコミュニケーション分野を総合的に支援するというビジネスモデルに変わり始めています。
海図のない海に向かって新しい船出の舵取りを任された経営陣への期待と責任は計り知れなく大きくなっています。


