第300話のテーマは『ブランド戦略を揺るがす懸念』です。
日本初の腕時計を製品化した企業
1881年12月に創業者の服部金太郎が服部時計店を創業して中古時計を買い取り修繕して売り出す事業を始めました。
1892年3月に時計工場である<精工舎>を設立して時計(クロック)の製造を始めました。
1917年10月に会社組織に改めて<服部時計店>となりました。
1937年9月にウオッチ(腕時計)部門が分離独立して<第二精工舎>となりました。
1969年12月に世界初になるアナログクォーツウォッチを発売しました。
1983年8月に<服部セイコー>に社名を変更しました。
1997年7月に<セイコー>に社名を変更しました。
2001年7月に<セイコーウオッチ>を設立してウオッチ事業を分社して事業子会社である……◉「セイコーウオッチ」◉「セイコークロック」◉「セイコープレシジョン」◉「セイコーオプティカルプロダクツ」などを統括する持株会社になりました。
2007年7月に<セイコーホールディングス(HD)>に社名を変更しました。
2017年4月に高橋修司氏が<セイコーウオッチ>の社長兼COOに就任しました。
創業家で社長兼CEOの服部真二氏は代表権のある会長兼CEOに就任します。
服部真二会長兼CEOがブランド戦略を描いて高橋修司社長兼COOがその戦略を推進していきます。
服部真二氏が2003年に社長に就任してから進めてきたことは世界における「セイコーブランド」の価値向上でした。
世界でも有数のスイスの高級メーカーと肩を並べても遜色のない「グローバルブランド」を目指します。
2017年5月から高級腕時計シリーズである「グランドセイコー(GS)」のブランド力の強化に乗り出しました。
価格とブランドイメージを引き上げて高級時計に強いスイスメーカーに対抗していく狙いです。
文字盤から「SEIKO」のロゴを外して売り場のデザインも一新します。
「グランドセイコー(GS)」の独立ブランド化とも言える決断です。
日本の伝統工芸や職人による彫金技術を生かした100万円以上の高付加価値商品も増やしていく考えです。
2017年5月に発表した「2018年3月期」の純利益予想は7%減でした。
外販用の時計駆動装置(ムーブメント)が中国や新興国で売れ行きが落ちています。
2017年6月に欧州の富裕層向けにロンドンにイギリス初の直営店を出店しました。
世界戦略のために新たなロゴに変えた高級時計の「グランドセイコー」を中心に幅広い商品を取り扱います。
この時点で75店の海外店舗を2019年3月末までに100店舗までに増やす方針です。
国内販売の伸び悩みで苦戦しているため積極的に海外出店を進めています。
さらに電子決済端末や小型通信機器などを扱うシステムソリューションにも力を入れていて「2018年3月期」の部門別営業利益が25%増になる見通しです。
連結全体に占める売上高は1割弱ですが全体の業績を下支えする非時計事業です。
2016年8月に開発した腕時計の「グランドセイコー」の内部構造を再現するVRシステムですが2017年7月に「セイコーミュージアム」以外の数カ所にも設置することを決めました。
「グランドセイコー」の3種類のムーブメント(動力機構)を再現していて幅1ミリメートル未満の小さい部品で構成される「メカニカル(機械式時計)」の内部を疑似操作することができます。
2017年11月に発表した「2017年4~9月期」の最終損益は24億円の黒字でした。
腕時計の販売が国内外で伸びたことやスマートフォン向けの半導体である電子デバイス事業も好調でした。
同じく2017年11月に高級腕時計のブランドである「グランドセイコー」だけを扱う世界初の店舗をアメリカ西海岸のビバリーヒルズにオープンしました。
これから世界の主要都市を中心に「グランドセイコー」の単独店やフルモデルをそろえる店舗を出店して女性向けやスポーツモデルなどの商品バリエーションも増やす考えです。
グランドセイコーのモデル数は170程度で中心価格帯は数十万円ですがこれから300万円以上や1000万円以上の商品を増やして富裕層などの獲得を狙います。
2018年1月に大リーグ「エンゼルス」の大谷翔平選手とサプライヤー契約を結んだと発表しました。
大谷選手の広告起用の契約は国内に限定されていますが高級腕時計のブランドである「グランドセイコー」のイメージアップに繋がることを期待しています。
2018年2月に発表した「2017年4~12月期」の連結純利益は前期比7倍でした。
時計事業の営業利益は29%増で中国でのネット通販が好調でした。
2018年8月に高級腕時計である「グランドセイコー」ブランドから若者向けに手ごろな価格帯の商品を10月に販売すると発表しました。
これは<セイコーウオッチ>の中価格帯商品が苦戦しているためで「グランドセイコー」から中価格帯商品を販売することで業績を挽回する狙いです。
しかし「高級ブランド戦略」を掲げてきた「グランドセイコー」から中価格帯商品を販売することはブランドイメージの低下に繋がりやすいと言えます。
半導体事業を切り離したことで減収になっている中で「時計に経営資源を集中する」ことへ中村吉伸社長は舵を切りましたが今回の「グランドセイコー」から中価格帯商品を販売する戦術は「高級ブランド戦略」を揺るがすことになりやすいという大きな懸念を抱かざるを得ません。


