【なぜ後継者は育たないのか?答えは経験が言葉になっていないから】後継者不在率52.1%、後継者難倒産189件が示す現実
後継者がいないと嘆く前に、直視すべき現実があります。
帝国データバンクの「全国後継者不在率」動向調査によると、2024年の後継者不在率は52.1%で過去最低を更新した一方、改善のペースは鈍化しています。
さらに、代表者の病気や死亡で事業が続けられなくなった「後継者難倒産」は、2024年に189件発生しました。
この数字が示しているのは、候補者が見つからないという問題だけではありません。
たとえ息子や娘、番頭格の社員が社内にいても、実際に引き継げる中身が、社長の頭の中にしか残っていないケースが多いという構造です。
なぜ、こうした事態が起きるのでしょうか。
答えは、経験豊富な社長ほど、数字を避けてきた積み重ねにあります。
私はこれまで、1,200件を超える経営相談に携わってきました。
その中で繰り返し感じるのは、経験豊富な社長ほど、数字を見せられると身構えてしまう傾向です。
決して数字が読めないわけではありません。
むしろ長年の勘に強い自負があるからこそ、数字を突きつけられると、自分の判断そのものを否定されたように感じてしまうのです。
若手幹部社員から数値管理表を渡された途端、これまでのやり方を全否定されたように感じます。
悪意があって数字を出しているわけではないのに、受け取る側は身を守るように反応してしまいます。
こうした抵抗を放置したまま意思決定を続けていると、判断の理由はいつまでも言葉にならず、周囲にも後継者にも伝わらないまま残ります。
結果として、後継者候補は継ぐ意思はあっても「継ぐ材料」を渡されないまま、代表の座を引き受けてしまいます。
これでは、後継者が育つはずがありません。
厳しい言い方になりますが、後継者不在は後継者本人の問題である以前に、経営者自身が生み出している問題でもあります。
ここで大切なのは、経験を捨てて数字だけに頼る取り組みではありません。
経験を数字に翻訳する視点です。
経験は仮説を生み出す力であり、『数字』はその仮説が正しいかを確かめる装置にすぎません。
両者を敵にするのではなく、答え合わせの関係に変えるだけで、抵抗感はかなり和らぎます。
私自身、経営相談の現場でホワイトボードを使いながら、社長の頭の中にある勘や想いを、あえて数字や条件式として書き出す進め方を続けてきました。
何となくで決めていた発注のタイミングも、条件として書き出してみると、実は明確な線引きが存在していたと分かるケースがほとんどです。
この線引きこそ、後継者に渡せる唯一の材料になります。
やり方は難しくありません。
まず日々の判断の中で、「これは自信がある」と感じる勘を一つだけ選びます。
次に、その勘を支える数字を、売上や在庫回転率など身近な指標から一つ拾い出します。
最後に両者を照らし合わせ、ズレがあれば理由を考えます。
これだけで、経験は誰かに渡せる形へ変わり始めます。
長年培ってきた勘と経験を、否定するつもりは決してありません。
むしろ、会社を支えてきた何よりの財産であり、リスペクトしています。
ただし財産は、しまい込んだままでは次の世代に渡せません。
数字という言葉に変えて初めて、社員にも後継者にも金融機関にも伝わる根拠に変わります。
今から少しずつでも、判断の理由を書き残す時間を取ってみてください。
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