「昔はこのやり方で売上が伸びたのに最近は社員が動かない」
こうした悩みが増えています。
会議で決めた方針が現場で実行されず指示の意図をつかめないまま若手社員は様子をうかがう。
この違和感を放置すると組織の実行力は下がり続けます。
解決の糸口は新しい研修を追加するのではなく過去の勝ちパターンを見直す作業です。
これをアンラーニングと呼びます。
過去に身につけた知識ややり方を振り返り
今の時代に合わない部分を手放す取り組みです。
この手法が有効なのは市場や採用環境が変われば
以前のやり方が足かせに変わるためです。
過去の成功は特定の条件下でのみ通用した賞味期限つきの戦術にすぎません。
しかし成果を上げた本人ほどこれが正解だと思い込みやすく若手の提案を押し戻す原因になります。
今回は過去の成功体験が育成のブレーキになる仕組みと回せる手順を整理します。
過去の成功体験が育成のブレーキになる仕組み
過去の成功体験が厄介なのは当時とは条件が変わっているのにこれが正解と扱われやすい点です。
成果を上げた本人ほど自分のやり方を否定されたくない気持ちが働きます。
その結果新しい手法や若手の試みを無意識に押し返しがちになります。
営業の現場では紹介と訪問件数で取引が増えた時代の感覚が残りやすいです。
とにかく回数を増やせという指示に集約されるケースがあります。
しかし今は見込み客が事前に情報を調べて比較する時代です。
行動量だけ増やしても質の低いアプローチばかり増えて成果につながりません。
さらに厄介なのはこうしたやり方が暗黙のルールとして職場に根づく点です。
誰も問い直さなくなり若手は理由のわからない指示に従うふりをします。
裏側で別のやり方を探し組織の動きがバラバラになっていきます。
【モデル事例】
製造業のA社では営業部門を長く引っ張ってきた課長が
訪問件数を主な管理指標に使っていました。
課長は取引先と直接会って信頼を積み上げた経験があり足で稼ぐ発想を手放せずにいました。
その一方で若手は展示会やWeb経由の問い合わせから
見込み客を拾いオンライン商談で関係を深めようとしていました。
しかし会議ではまず訪問件数を増やせという指示が続き
若手は異論を言わず裏で独自対応を進めました。
その結果案件管理が二重化し
顧客情報の共有が曖昧なまま受注率は下がり残業だけが増えていきました。
中小企業で回せるアンラーニングの手順
アンラーニングを進めるうえで大切なのは
考え方を変えろと精神論で迫らない点です。
前提と指標と意思決定の流れを順番に見直す設計が必要です。
まず過去の成功体験を言葉にして棚卸しします。
いつ、どの顧客層がどの手段で成果につながったかを書き出してください。
今も同じ条件が当てはまるかを確認するとズレている部分が浮かび上がります。
次に守るべきと決めてきた指標を見直します。
訪問件数や残業時間など行動量に近い指標を優先しすぎていないか点検してください。
営業であれば提案件数よりも商談化率に比重を移す発想が有効です。
そのうえで若手の気づきを意思決定に組み込む仕組みをつくります。
単に意見を聞く場を設けるだけでは実行につながりません。
試す権限と期間をセットで渡す運用が必要です。
最後に全社一斉ではなく小さく試して記録を残す進め方に切り替えます。
中小企業は人員に余裕がないため一部の部署で試しうまくいった要因だけを横展開します。
【モデル事例】
機械部品メーカーのB社では熟練者の段取りが属人的になり
新人が増えるたびに不良品が増えていました。
作業手順は見て覚える前提で進めており
暗黙の判断基準が共有されないまま人によって品質に差が出ていました。
そこでベテランの段取りを動画で撮影し
判断理由を言葉で説明してもらいながらチェックリストに落とし込みました。
経験でわかるはずという教え方をやめ初日で必ず確認する十項目を決めました。
その結果教育にかかる時間が短くなり
担当者が変わっても品質のばらつきが減りました。
今日のまとめ
アンラーニングは過去の成功体験を否定する行為ではありません。
前提を分解し今も通用する部分だけを残す作業です。
育成が止まる職場ではベテランの経験が暗黙のルールとして固定されています。
誰も検証できないまま若手の納得と実行がかみ合わなくなっていきます。
中小企業で現実的に進めるには
- 成功体験の棚卸し
- 前提のズレの特定
- 指標の見直し
- 小さな試行
これら四つを意識してください。
ベテランの役割を過去のやり方を守る人から経験を言葉にして更新する人へ切り替える。
この転換が組織全体の実行力を底上げします。
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*次回の予定2月11日水曜日
第43話(組織の人間関係)『非公式なコミュニケーションの重要性』
次回もどうぞ宜しくお願いいたします。


