中小企業の経営者や幹部の方と話すと共通した悩みが浮かび上がります。
3年後の姿を言葉にしてほしいと社員から求められながら
実際には月次の数字と目先の対応に追われています。
その結果採用、投資、新規事業といった意思決定が
案件ごとのその場判断になり組織全体のエネルギーが分散していきます。
解決策は3年後のビジョンを明文化し
経営と現場の判断基準とする取り組みです。
抽象的なスローガンではなく経営者の覚悟と
顧客の変化が結びついた短い文にまで圧縮すれば
会議や日常のやり取りで繰り返し使える指針に変わります。
この方法が有効なのは質問に答える形でビジョンを組み立てると
思いつきのキャッチコピーではなく経営の現実と結びついた生きた判断軸になるためです。
また売上目標だけでは決めきれない優先順位を
言葉のレベルで揃えられるため社員の解釈のズレも減らせます。
今回はまずビジョン不在の経営が抱える限界を整理します。
次に3年後の理想を明確にする7つの質問と
答えを一文にまとめるプロセスを解説します。
ビジョン不在の経営が抱える限界
ビジョンを持たない経営は判断のたびに議論の起点が変わり意思決定コストを増大させます。
売上目標や利益率だけでは複数の選択肢から優先順位を決められません。
なぜなら数字は結果を示す指標であり方向性を示す言葉にはならないからです。
結果として採用基準、商品開発、価格設定の判断が揃わず現場の疲弊を招きます。
さらに経営者自身も判断の根拠を説明できず社員からの信頼を失います。
MVVを掲示している企業でも判断の場で使われていなければそれは飾りに過ぎません。
【企業事例モデル】
製造業A社の支援先では代理店からの値引き要請が増えるたびに営業と工場で判断が分かれていました。
営業は売上維持を優先し工場は収益悪化への不安を強く感じていました。
会議では毎回値引き条件の妥当性から議論が再開され同じ論点の繰り返しが続いていました。
そこで経営者は3年後に提案型比率を高めて利益率を守るという方針を一文で固めました。
それ以後の値引き判断は提案型への移行に近づくかどうかで即決できるようになりました。
3年後ビジョンを言語化する7つの質問
ビジョンは思いつきの宣言ではなく
質問への回答を積み上げて短文化できます。
以下の7つの質問に回答してください。
- 3年後に自社は何に誇りを持てる姿になっていますか
- 顧客はどのように変わりどの不便が減っていますか
- 続けない仕事は何ですかどのような依頼は丁寧に断りますか
- 顧客はどの言葉で感謝を伝えていますか会話の一文で書いてください
- 社員はどのように働いていますか任せる範囲をどこまで広げていますか
- 経営を管理する指標を3つ選ぶとしたら何ですか売上以外も含めて考えてください
- 今すぐ手放したい重さは何ですか惰性で続けている取引やプロジェクトも含めてください
回答を書き終えたら以下の形式で一文へ圧縮します。
*3年後に私たちは(誰に)対して(価値)を届け(結果)を実現します
ここまで短くすると会議で読み上げて判断基準として使えます。
【企業事例モデル】
サービス業B社の経営者は地域一番の会社を掲げながら値下げと商品追加を繰り返していました。
社員は何を大切にすべきかが分からなくなり
打ち合わせではその都度優先順位の議論が再燃していました。
7つの質問に取り組む中で単発の低単価案件は追わないと明確に書き出しました。
次に継続利用する顧客がどのような変化を喜んでいるかを整理し
契約更新を前提にしたサービスへ見直しました。
その後は広告による集客よりも紹介が増え
現場の負担と心理的な摩耗が減少しました。
今日のまとめ
ビジョン不在の経営は判断の遅延と説明の不統一を生み現場の消耗を招きます。
対策は3年後ビジョンを具体的な文章で固定し判断の基準へ格上げする方法です。
実務で機能するビジョンは以下の4条件を満たす必要があります。
- 具体性
- 自分基準
- 行動への直結性
- 共有可能性
7つの質問で回答を掘り起こし一文へ圧縮すれば会議で使える判断軸になります。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
*次回予定1月22日木曜日第6話『事業計画は作るより使う計画倒れにしない実践法』
次回もどうぞ宜しくお願いいたします。


