【なぜ一流の経営者は情報を減らすのか?】決断力を上げる、40〜70ルール
「もう少し情報が集まってから決めます。」そう言い続けて、気がつけば丸半年が過ぎてしまっていませんか。
PRESIDENT Onlineが2026年7月15日に掲載した記事です。
元米国務長官のコリン・パウエルは、意思決定について「40〜70ルール」を提唱しています。
情報が40%にも満たない段階では決断せず、70%を超えるまで待つのは遅すぎるという明快な考え方です。
同じ記事の中では、Amazon創業者のジェフ・ベゾスの言葉も紹介されています。
ほとんどの意思決定は、欲しい情報の9割まで待つと明らかに遅すぎるという指摘です。
優秀と呼ばれる経営者ほど、情報を多く集めているように見えます。
しかし実際は逆で、決断力がある人ほど、必要な情報の範囲を早い段階で見切っています。
情報を減らしているのではなく、正確には、判断に使う情報と使わない情報をあらかじめ選別しているのです。
この選別の速さこそが、周囲から見て、決断力があると映るのだと私は考えています。
これまで、戦略立案から事業計画まで、一貫して経営者の判断を整理する支援を続けてきました。
1,200件を超える経営相談にも対応してきましたが、決断が遅い経営者に共通するのは情報が足りないからではありません。
どこまで集めれば十分かという基準を持っていない点です。
基準がなければ、100%の確信を求めて情報収集を続けてしまいます。
100%を求めるほど、決断は先延ばしになり、その間も競合や市場は絶えず動き続けています。
広告企画制作の現場で6万件を超える案件に関わってきた経験からも、これは実感があります。
企画や提案の現場では、完璧な情報がそろうのを待っていたら締め切りに間に合いません。
7割ほどの情報で仮説を立て、動きながら残り3割を埋めていく進め方の方が、結果的には精度も速度も上がります。
情報を減らす勇気は、長年の現場の実務で培われた技術です。
このルールは、経営者個人だけの話ではありません。
組織全体に当てはめて初めて、本当の効果を発揮します。
多くの会社では、会議のたびに資料が増え続けます。
担当者は「漏れがあってはいけない」と考え、情報を盛り込みすぎます。
結果として、本当に決めるべき論点が、分厚い資料の中に埋もれてしまいます。
決断力がある会社は、情報を集める力ではなく、情報を絞り込む企業文化を持っています。
では、どうすればいいのか。
具体的には、大きな判断をするたびに、「今回、絶対に必要な情報は何か」を3つ以内に絞って共有してみてください。
3つを超える情報は、参考資料として別に残しておけば十分です。
逆に、あれもこれもと詰め込んだ分厚い資料を渡し続ける限り、現場は、全部大事という感覚から抜け出せません。
経営者が先に基準を示せば、現場は資料を厳選できます。
基準がなければ現場は、不安から情報を積み増し続け、意思決定の速度は少しずつ落ちていきます。
支援している中京圏の会社では、本業より新規事業の売り上げの方が上回りました。
その過程で、会議に持ち込む資料を、あえて一枚にまとめる運用へ切り替えています。
情報量を絞った結果、会議の時間は短くなり、決定までのスピードはむしろ確実に上がりました。
資料が薄くなるほど、議論の質はむしろ上がるという逆説を示す確かな事例です。
仕入れ判断や価格決定にかける情報収集の期間も、あらかじめ区切るようにしていました。
「変化はコントロールできない。できることは、その先頭にたつことだけである」とピーター・ドラッカーは述べています。
情報を完璧に揃えてから動くという発想は、変化の先頭に立つ姿勢とは全く相いれません。
私が支援の場でホワイトボードを使うのも、情報を絞り込む過程を、経営者と現場が一緒に体験するためです。
集めた情報を書き出し、判断に直結する項目だけを残していきます。
この作業を一緒に行うと、情報を減らしても良いという感覚が、組織の中に自然と共有されていきます。
経営者一人だけが絞る力を持っていても、組織全体の決断力にはつながりません。
もし今、判断のたびに情報収集が長引いていると感じるなら、能力の問題ではありません。
どこで情報収集を打ち切るかという基準を、まだ決めていないだけです。
焦って完璧を目指す必要はありません。
むしろ完璧主義な姿勢こそが、決断を遠ざけている大きな要因かもしれません。
まず自分自身の基準づくりから始めてみてください。
次の判断に取りかかる前に、何%の情報が揃ったら決めるか、を先に決めてみてください。
次の会議では、「今回は3つの情報だけで決めます」と宣言してみるのも良いです。
その実践こそが、あなたと会社の決断力を、確実に軽くしてくれるはずです。


