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ブログ / 事業家の羅針盤

第23話 事業が伸びない人の時間の使い方

2026年7月16日 執筆:渡邉ひとし

【なぜ、一番忙しい経営者ほど事業が伸びないのか?】中小企業経営者に必要な時間の使い方

中小企業庁の「中小企業白書」は、人手不足がなお深刻だと示しています。

さらに、中小企業の労働生産性は長年ほぼ横ばいで、大企業と比べて緩やかに低下しています。

人が足りないのに、生産性も上がっていません。

現場をほぼ一人で支える働き方には、もう限界が来ています。

朝は誰よりも早く動き出し、夜は最後まで仕事の連絡に対応する。

電話が鳴れば出て、見積書をつくり、問い合わせにも自分で答えます。

取引先で問題が起きれば、真っ先に頭を下げるのも自分です。

責任感が強いほど、この働き方から抜け出せません。

売上が伸びないのは、努力が足りないからではありません。

働き方の組み立て方に、伸びを止める仕組みが潜んでいます。

毎晩帰宅が遅く、休日も仕事の連絡に追われている経営者は、少なくありません。

私はこれまで1,200件を超える経営相談を支援してきました。

社員を抱える会社の社長も、一人で事業を営む方も、悩みの根は同じです。

そこで繰り返し見えてくるのは、仕事の量ではありません。

自分一人に、判断と作業が集まりすぎている実情です。

値引きしてよいか。この見積もりはこの内容でよいか。この問い合わせにどう返すか。

毎回すぐに手を動かせば、その場は早く片づきます。

しかし、翌週も同じ作業に同じ時間を取られます。

一件ごとの対応は早くても、事業全体の成長は積み上がりません。

「自分がやった方が早い」は、今日だけを見れば正しい選択です。

ただし、一年後も同じ働き方を続ける前提なら、経営としては危うい選択です。

自分で抱えるほど、他の誰かに任せる発想は薄れていきます。

発想が消えるほど、抱える作業だけが静かに増え続けます。

この悪循環が、事業の伸びを静かに止めています。

◉ 時間を三つに分けると、抱えている課題が見えてくる

まず、直近一週間の仕事を三つに分けてみてください。

一つ目は、今日の売上を守る仕事です。

顧客対応、品質確認、資金繰り、納期管理などが当てはまります。

二つ目は、明日の売上をつくる仕事です。

新商品、価格戦略、営業の導線づくり、発信、仕組みづくりです。

三つ目は、自分以外に任せられる仕事です。

日程調整、転記、定型的な確認、資料の微修正などが該当します。

大切なのは、何時間働いたかではありません。

どの分類へ時間を使ったかです。

明日の売上をつくる仕事には、締め切りがありません。

だから、急ぎの電話や相談に押されて、後回しにされがちです。

今日やらなくても、すぐには困りません。

しかし、半年後には競合との差になって表れます。

差が見え始めた時点では、取り戻すための時間はもう限られています。

◉ 判断の基準を先に決めておく

任せると聞くと、社員がいなければ難しいと感じるかもしれません。

しかし、任せる先は社員だけに限りません。

定型的な作業なら、外部の専門家や代行サービスに委ねられます。

書類の下書きや情報整理なら、生成AIを使うだけで数時間の作業が数分に縮みます。

目の前でその結果が見られます。

繰り返し発生する判断なら、自分なりの基準を先に決めておく方法もあります。

値引きは何%まで許すか。返信はどの時間帯にまとめて行うか。発注は何万円まで即決してよいか。クレームはどの段階で自分の判断を仰ぐか。

この基準を一枚に書き出しておくと、毎回ゼロから考える必要がなくなります。

社員がいる場合は、この基準を共有するだけで、日々の確認が大きく減っていきます。

私自身、広告やマーケティングの現場で6万件を超える案件に携わってきました。

独立後は、経営相談、教育、セミナー、執筆と、複数の役割を一人で担ってきました。

すべてを自分で抱え続けていたら、今の働き方は続けられなかったはずです。

定型作業は仕組みに、判断は基準に、任せられる部分から手放してきました。

だからこそ、明日をつくる時間を確保できています。

関西圏の老舗会社をご支援した際も、この基準づくりから着手しました。

判断の基準を社内で共有し直し、優先順位を言葉にしていきました。

その結果、3年で年商を28億円から58億円へ伸ばす結果につながりました。

規模の大小にかかわらず、基準を先に決める発想は同じように使えます。

来週の予定に2時間だけ、明日の売上をつくる時間を確保してください。

空いた時間に考えるのではなく、先に押さえておきます。

そのうえで、その2時間を奪っている仕事を一つ選んでください。

そして、外注やAI、基準づくりのどれで手放せるか、考えてみてください。

事業が伸び悩む経営者は、働いていないわけではありません。

むしろ、目の前の相手へ誠実に向き合いすぎています。

だからこそ、働く量を増やす必要はありません。

「すべて自分で片づける」から「手放せる部分は手放す」へ、少しずつ切り替えましょう。

あなたが誰よりも現場で戦ってきた事実は、事業の何よりの土台です。

だからこそ、その熱量を「明日をつくる時間」へ、少しずつ移してみてください。

事業の明日を考える時間は、余裕ができてから生まれるのではありません。

自分で守ると決めた瞬間から、初めて生まれます。

渡邉ひとし
渡邉 ひとし株式会社未来デザインカンパニー 代表取締役/持続型経営コンサルタント

経営戦略・組織変革・AI活用を、実務と心理の両面から支援しています。中小企業の経営者の方には、訪問またはオンラインで、ご相談をお受けしています(初回は無料)。

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