従業員の採用基準は今年も従来どおりですか?
「インターンから面談まですべてがオンライン前提に変わってしまった」と大学のキャリアセンター担当者が述べています。
2021年卒の採用では急遽(きゅうきょ)オンライン説明会や面接を導入し不慣れな企業が多かったようですが今年(2022年卒)の採用に関してはオンライン採用を事前に準備しさまざまな工夫を凝らしています。
会社説明会の様子をアーカイブにして24時間いつでも見られるようにする。
企業があらかじめ設定した質問に対し学生がスマートフォンなどで撮影した動画で回答するオンデマンド面接など。
学生は大学の授業をオンラインで受けることも多くオンラインでのインターンシップ経験などもあり学生もオンラインに慣れています。
コロナ禍で採用枠を縮小している業界や企業も増えてきたことで学生優位を意味する『売り手市場』に変化が出てきました。
一方、コロナ禍で増収増益の記録を更新し続ける『 IT業界』では採用意欲は旺盛でも採用に変化が出ています。
『非 IT業界』の一般企業がIT人材などのデジタル人材を積極的に採用するようになったことでデジタル人材の需要が高まり新卒採用の年収が1000万円を超える可能性も出ています。
中小企業も大企業も日本の市場に於いては同じ『外部環境』のもとで懸命に営業活動をしています。
大企業の課題や経営手法を観察することで自社の経営に活かしてください。
今日の企業事例は第442話<武田薬品工業>です。
(*写真はイメージです)海外の製薬会社を積極的に買収1781年6月に武田長兵衛氏が薬種商を創業しました。
1895年に自社工場を設立し製薬事業を開始しました。
1915年に大阪市に『武田製薬所』を開設しました。
1918年7月に大阪府西成郡神津村に<武田製薬>を会社設立しました。
1925年に<武田長兵衛商店>と<武田製薬>が合併し<武田長兵衛商店>として会社設立しました。
1943年8月に<武田長兵衛商店>を<武田薬品工業>に商号を変更しました。
2011年にスイスの製薬大手<ナイコメッド>を買収しました。
2015年4月にクリストフ・ウェバー氏がCEOに昇格しました。
2019年1月にアイルランドの製薬大手<シャイアー>を6兆8000億円で買収しました。
<武田薬品工業>のビジネスモデル2019年11月に研究開発についてのメディア説明会を開催しました。
2024年度までにがんや中枢神経領域ワクチンなどと合わせて14の新製品を販売すると表明しました。
「14製品のほとんどが標準治療を進化させる仕組みもしくは全く新しい仕組みの治療薬だ」とアンドリュー・プランプ取締役(研究開発担当)は述べています。
がん免疫療法や遺伝子治療など新規性の高い医薬品を効率的に開発していく姿勢を強調しました。
具体的には<テキサス州立大学>MDアンダーソンがんセンターと共同でNK細胞を使った新しいがん免疫療法の臨床試験の状況や血友病に対する遺伝子治療などを詳しく説明しました。
2020年1月に『2021年度』からワクチンの世界販売に乗り出すと表明しました。
ワクチンは大量に生産し販売できる体制が必要で欧米の製薬大手が圧倒的なシェアを占めています。
日本勢がワクチンを世界規模で販売するのは初となります。
2020年2月に米国バイオ企業の<PvPバイオロジクス>を買収したと発表しました。
2016年から自己免疫疾患の治療薬の開発で提携しており新薬候補の開発の進捗状況で買収する条件をつけた契約を結んでいました。
小麦などに含まれるグルテンによって引き起こされる自己免疫疾患『セリアック病』を治療する新薬候補を開発していました。
2020年3月に新型コロナウイルスに対する治療薬を開発すると発表しました。
血液由来の医薬品開発技術を使って新規治療薬を開発します。
人での安全性や有効性を確かめる臨床試験(治験)を早期に始め最短9カ月程度で実用化することを目指します。
2020年4月に開発中の新型コロナウイルスの治療薬で米国<CSLベーリング>と提携しました。
<武田薬品工業>と<CSLベーリング>はヒトの血液由来の分野の世界大手で両社が組むことで血液の収集など開発を加速させる考えです。
この提携に英国やドイツ、スイスなどの製薬会社が参加します。
2020年4月に一般用医薬品(大衆薬)事業を売却する方針を表明しました。
『アリナミン』『ベンザブロック』などを販売している完全子会社の<武田コンシューマーヘルスケア>を売却額4000億円程度で売却することを目指しています。
抗がん剤など主力の医療用医薬品事業の新薬開発に経営資源を集中する考えです。
2020年5月に『2020年3月期』の連結決算の売上高が前期比57%増と発表しました。
国内の製薬会社として初めて売上高3兆円を超える決算になります。
2020年8月に米国で新型コロナウイルス感染症向けの臨床試験を始めたと発表しました。
米国製薬大手の<アッヴィ>や<アムジェン>などと既存の薬を含む3種類について数カ月かけて有効性を検証し効果があれば承認申請の手続きに入ります。
2020年8月に一般用医薬品事業(大衆薬)を米投資ファンド大手の<ブラックストーン・グループ>に売却すると発表しました。
「大きな変革には痛みを伴うが乗り越えなければ持続的成長という未来を実現できない」と<武田薬品工業>のクリストフ・ウェバー社長は述べています。
2020年10月に<AWS>と<アクセンチュア>の2社との提携を発表しました。
創薬や生産を含む企業活動に関する電子データの約8割を従来の社内サーバーから<アマゾン・ウェブ・サービス>のクラウドサービスに移行します。
安全で低コストのデジタル基盤を作り外部の製薬会社との医薬品開発や社内の業務効率化を加速する狙いです。
2020年12月に米国<モデルナ>のワクチンの日本での治験を始めると表明しました。
米国で緊急使用を許可されており<厚生労働省>などと連携して日本への供給準備を急ぐ考えです。
「特に高齢者の発症や重症化の予防につながることが確認されておりコロナの影響を受けやすい人々を守れる」とワクチン事業トップを務めるラジーヴ・ヴェンカヤ氏は述べています。
2021年2月に新型コロナウイルスワクチンについて日本での臨床試験の開始を発表しました。
国内の自社工場でライセンス生産する米国バイオ製薬<ノババックス>が開発中のワクチンの臨床試験です。
2021年5月に米国バイオ企業<モデルナ>が開発した新型コロナウイルス向けワクチンの国内での臨床試験を完了し治験データを<厚生労働省>へ提出したと発表しました。
提出したのはモデルナ製ワクチンを日本人へ投与した約200人分のデータで1月から始めた国内治験で被験者は28日間隔で2回接種し安全性や有効性を確認できました。
「モデルナの治験結果を裏付けた当局と協働しワクチンの選択肢を提供する」と日本ワクチン事業部長の今川昌之氏は述べています。
<武田薬品工業>はモデルナ製ワクチンを国内へ流通する機能を担います。
今日の企業事例である<武田薬品工業>を少し俯瞰して見てみましょう。
2019年1月にアイルランドの製薬大手である<シャイアー>を買収しました。
6兆円超という巨額を投じて日本企業では過去最大のM&A(合併・買収)となりました。
売上高は世界の製薬会社で9位と世界の製薬大手『メガファーマ』の一角を担うまでになりました。
しかし上位企業との差は大きく首位の<スイス・ロシュ>の年間の研究開発費は約110億ドルで<武田薬品工業>は<シャイアー>の買収前から5割増やしても45億ドルです。
2008年に約9000億円で買収した米国の<ミレニアム・ファーマシューティカルズ>など従来はM&A(合併・買収)で新薬候補を獲得してきましたが<シャイアー>の買収を機に自社での新薬開発を中心に据える『創薬』型企業への脱皮を目指しています。
さらに世界規模で劣る<武田薬品工業>は『選択と集中』の道をとります。
具体的には……
- 消化器系疾患
- 神経精神疾患
- 癌(がん)治療
- 患者数が少ない希少疾患
- 人間の血液由来の成分を使う血漿分画製剤
の5つの領域に特化して新薬を開発する考えです。
一般用医薬品(大衆薬)事業を売却する方針を固めたのも<シャイアー>の買収によって膨らんだ負債を圧縮するためです。
2019年12月末時点で有利子負債は5兆円超に膨らみました。
この債務圧縮のため100億ドル(約1兆1000億円)規模で非中核事業を売却する方針を2020年4月に掲げています。
2020年8月には国内で勤務する医薬情報担当者などを対象に希望退職の募集を発表しました。
医師が自らネットで情報を集められる時代になりコロナ禍で対面のやり取りも減り医薬情報担当者の営業モデルが問い直されています。
がん治療などの重点領域に特化する事業戦略を進める中で組織体制を見直し事業や人員、資産も含めた聖域なき改革に取り組んでいます。
『2031年3月期』までに本業の儲けを示すコア営業利益を『2021年3月期』見通しに比べ5割増の1兆5000億円以上に高める方針を掲げています。
自社で大型新薬を育てる開発力と<シャイアー>との統合効果をより深めることができるか?
従来のM&A(合併・買収)による事業成長のビジネスモデルから新薬開発によるビジネスモデルへの転換が求められています。


